第2章 happy jewel
へ? という顔の唯から視線を外し、ジンはキールを呼んだ。
「キール、行くぞ。あの石にキールロワイヤルお見舞いするぜ」
「あ? でもお前、あれ狙ってたんだろ?」
そう言いいながら唯の肩から飛び立つキール。
「あのままじゃ意味が無いんだ」
「? なんか良くわかんねーけど。いいのな?」
「あぁ。そのかわり、ちゃんと目閉じてろよ、キール」
「あ、そっか。狙い外すなよ、ジン」
唯は石に近付いていく二人をハラハラしながら見つめる。
と、近付いてきたジン達にやっと気付いたのか、女主人が叫んだ。
「渡さないわよ! これは私の『幸福の石』よ!!」
必死の形相で台座の前に立ちはだかる女主人。
だがジン達は無言で距離を縮めていく。
キールの身体が輝きながらジンの腕に同化していく。
「何をするの!?」
キールの嘴を主人公の方へ向けるジン。
「あんたの言う幸せを頂く。……退かないとあんたも一緒に撃っちまうぜ」
「あ……あ」
青ざめた顔で、それでも身を引かない女主人。――その時。
「ジン! 私があの人押さえとくから!」
唯がジン達の横を走り過ぎ、女主人に向かっていく。
「きゃぁ!!」
バッと横から婦人に飛び掛かかった唯は、そのまま一緒に床にダイブする。
「サンキュー唯! ……行くぜ、キール!!」
唯は奇声を上げながらジタバタともがく女主人を、目を閉じながら押さえつける。
「キーールロワイヤル!!!」
ジンの凛とした声が響き、直後閃光がほとばしるのが目を閉じていてもわかった。
そして、すさまじい音が館全体を震わせた。
……唯がそおっと目を開けると、台座やケースは粉々になり、ピカピカと光る石の破片が床に散らばっていた。
はっとして自分の下にいる女主人を見下ろすがどうやら気絶してしまったよう。
唯は起き上がり、台座の周辺に屈んでいるジンを見る。
キールはすでに元に戻り、ジンの真上を飛んでいた。
「ジン? 何やってるの?」
「……あった」
「え?」
ジンが何かを手に取り立ち上がった。
(砕けた石の破片?)
大きさは1センチに満たないが、その欠片は一際輝いているように見えた。