第1章 越前リョーマ
リョーマは不敵な笑みを浮かべたまま私を見ている。
「もう、教室だからだめだよ、誰か来るだろし」
リョーマは笑みを崩さない。それどころか少し楽しそうだ。かっこよくて、なんかむかつく。好き。
「じゃあ移動しよ。カバン置いて」
言うが早いから自分もカバンを机に放り、私にも荷物を置かさせ再度手を掴まれた。
「あ、ちょっと待って、どこ行くの」
「トイレ…は、人くるか。保健室かな」
手を引いたままずんずん進むリョーマに慌てて付いていく。
「失礼しまーす」
リョーマが無遠慮に保健室をガラッと開けると、椅子には誰もいなかった。
ぎゅ、と手を握られているのでそのまま付いて歩くと、カーテンの向こうから小さく泣き声の様なものが聞こえた。
「やっぱりね」
リョーマが小さく呟き、意図が分からないまま私は首を傾げた。
引き返し保健室の扉を閉め、鍵をかけた。
そして泣き声の方に近付く。
あ、これ泣き声じゃない…気付いたが遅く、リョーマが躊躇いなくカーテンをシャッと開けた。
「ちょっ、えっ」
慌てて自分の口を手で抑えたが、視界に入ってきたのはいつも挑発的な格好をしている保険医が見知らぬ男子に跨っている様だった。
「センセイ、鍵かけとかないと見つかるよ」
リョーマが普通に話しかける。素肌に白衣だけを羽織った保険の先生は、男子生徒の上で顔だけこちらを見た。
「珍しい、え、越前くん、遊んでくれる気に、なったの?」
腰を振りながら話す内容に顔をしかめると。保険医が私に気付いた。
「なぁんだ、女の子連れか」
「そういうこと。俺、アンタに興味ないから」
握ったままの手に力が込められる。
状況が飲み込めないまま固まっていると、リョーマが楽しそうに振り返る。
「じゃ、ベッド借りるから、1時間目は上手いこと言っといて」
リョーマはカーテンを閉め。隣のベッドへ私を導く。
「え、1時間目サボるの?」
困惑して間抜けな質問をする私にリョーマが嫌そうな顔をした。
「今更何言ってんの」
そのまま押し倒され、リョーマが私に跨った。
隣のベッドでついさっき見た光景だ。男女は逆だけど。