第1章 越前リョーマ
今年の冬は、雪が降るのが早いらしい。
ホワイトクリスマスになるでしょう、とお天気お姉さんが言っていたけれど、さらに早い23日の今日、朝から雪が降り続いていた。
終業式だから、少し大きめの手提げを持って学校へ向かう。
歩いていると、車がキッと路肩に止まり、助手席の窓が開いた。
警戒して一歩後ずさると、開いた窓からリョーマが顔を出した。
「、おはよ」
「リョーマ!おはよう」
嬉しくて窓に近づく。
「乗れば?雪だし、歩くの大変じゃない?」
「お前の車じゃねーけどな!」
運転席からおじさんの声がする。
「あ、リョーマパパ、おはようございます。」
挨拶をしながら遠慮なく乗り込むと、リョーマパパがバックミラー越しに「おう、おはよう」と言った。
「この雪だと、今日はコート使えないね」
「だね。筋トレはあると思うけど、今日一緒に帰る?」
「うーん…荷物あるから、先に帰ろうかな」
「そっか」
声のトーンは変わらないけれど、少しがっかりしただろうか。
そこから特に会話はないまま学校に着いた。
「オヤジ、サンキュー」
「ありがとうございました」
「いいってことよ、また遊びに来いよ」
「はい、また」
お辞儀をするとリョーマパパはさわやかに走り去っていった。
「いつまで突っ立ってんの。」
リョーマに言われ振り返ると手を差し出された。
そっと自分の左手を重ねると、下駄箱まで少しの距離なのに胸が熱くなった。
車は思っていたよりも早く、登校時間にまだ30分ほど余裕があった。
「誰もいないね」
靴を履き替え校舎に入ると、しんとした静寂が私達を迎えた。
手を繋ぎ直し教室へ向かうと、リョーマが窓際まで私を引いた。外に何かあるのかと覗き込むと、頰を向けられ唇がふさがれた。
「んっ」
慌ててリョーマを制し手で身体を押しやる。びくともしない。
下唇をはむ動作に無意識に唇を開くとすかさず舌が浸入してくる。
身体を放そうとしていた力はあっという間に抜けて、リョーマの制服を掴むと、背中に回された手がゆっくり下に降りて臀部を撫でた。
その手に力が込められ普段触れられない部分にいつもと違う感覚が走る。
「ふぁ…」
ようやく唇が離れ、勢いよく酸素を吸い込む。
少し目に力を入れてリョーマを見据えた。