第5章 甘い甘い練習
十四「おかえり!お嬢様!」
なんか………。
いや、もういいや。
好きにやって……。
十四「となり座ってもいいですかー?座るね?座るね!」
『………どうぞ』
わたしには、もうどうすることも出来ない。
十四「ヨイッショー!」
ここに来る客は、この行動ひとつひとつを可愛いと思ってるんだよね。なんかね、うん。わたしにはよく分からない世界だ。
十四「ねえねえ、ケーキ食べる?」
『………食べます』
ケーキなんてあるんだ、この店。
十四「お待たせ、ドゥーン!」
この無駄な効果音。もう、そこはツッコまない。
ケーキを食べようと、お皿を持ち上げようとした時。
十四「あー!待った待った!ストップストップー!」
わたしが持っていたお皿を取り上げられてしまった。
十四「僕が食べさせてあげるから!」
『え………』
わたしの返事も待たずにフォークでケーキをすくう。
十四「はい!あーんして!」
『…………』
十四「もー、はーやーくー!」
もう、いい加減に腹くくろう。
『あ、あー………』
十四「どおどお?おいしい?」
味なんて分かんない。
っていうか、十四松さん近すぎ……!
十四「僕にも食べさせて!」
まだ!?
『は、はい』
十四「んー!おいしい!」
あ、生クリームが口のはしについてる。
紙ナプキンをテーブルの上から取る。
『生クリームついてます』
そう言って、紙ナプキンで拭いてあげる。
十四「ありがとう!」
なんか、かわい───……っ!
ここで正気に戻る。
なに、母性本能芽生えてんだ、わたし!
『次、トド松さん!』