第10章 悪が勝ってもいいじゃん【一松】
一「なんかさ……」
ほのぼのとした猫に囲まれたこの雰囲気の中で、一松さんが少し顔を歪めて話しかけてきた。
『はい、どうしました?』
横にいる一松さんの方に顔を向ける。
その瞬間、視界が紫一色になった。
『!?』
状況を読み込めずに固まってしまう。
一「なんで猫の相手ばっかりするの……?」
背中に一松さんの手が回っている。
抱きしめられているのだ、ということに気づくのに少し時間がかかった。
『なんで……って、言われても……』
猫カフェだし………。
っていうか、そろそろ離して欲しいな……とか思ってるんですけど……?
どうすることも出来ないままうろたえていると、一松さんがわたしの背に回していた手を解いた。
ほっと安心したのもつかの間。
一松さんが今度はわたしの肩に顔をうめる。
一「………なんか、妬ける」