第10章 悪が勝ってもいいじゃん【一松】
【一松side】
俺に似てるとかいう猫を愛しむように彼女が撫でる。
それだけなのに俺と錯覚して、心臓が破裂しそうなくらいに早鐘を打つ。痛い。こんなにも胸が痛くなったのは、胸が締め付けられたのは初めてだ。
いつの間にか、俺はずっと彼女のことを目で追っていた。ちょこちょこと色んな場所を移動する彼女は、どこか危なっかしく感じた。その後ろを俺似の猫が追いかける。
なんだよ。
お前ばっかひっついて。
ムカつくんだけど。
ああ、これが嫉妬、ってやつ?
猫相手に嫉妬とか、マジでクズだろ、俺。
そんな時、何か温かくて柔らかいものが俺の足に触れた。
一松「………なに?」
一匹の真っ白な猫。
一松「なんか似てる………」
彼女に似てる。
純白なところ。
優しいところ。
俺にかまってくれるところ。
彼女にそっくりだ。