第1章 初のご来店
『ちょ、ちょっと待ってもらってもいいですか?』
ウエイターさんが小首を傾げながら、どうぞ、と笑顔で言う。
わたしはまず、隣で気絶しかかっている由美を正気に戻した。
『由美!しっかり!!』
「ねえ、伊織………」
『なに?』
「もう、死んでもいい………」
いや、ダメだから!
とりあえず、由美が復活することを祈りながら、近くのソファーに寝かせる。
そして、だ。
『あの、ひとつ、いいですか?』
「ええ、どうぞ」
『皆さん、ご兄弟で……?』
わたしの質問にはウエイターさんじゃなく、おそ松、とか名乗っていたホストが答えてくれた。
「まあね。っていうか、俺達六つ子だし?」
『………六つ子……。だから、こんなに似てるんですか』
「そっくりでしょ?常連さんでも見分けられないからね」
え?
いや、まあ似てるけど……。
『確かに似てますけど、見分けくらいつきますよ』
「え?」
だって、どれだけ似てるって言ったって一人一人は違うんだから。