第1章 前編
さすがにこの時はトランクスの顔が見られなくて、足元を見ながらユメは続けた。
「チョコ。トランクスに渡したくて……!」
「……オレに?」
コクンと大きく頷いて、ユメは思い切って顔を上げた。
まっすぐに彼のブルーの瞳を見つめて言う。
「好き……なの!」
トランクスの目が大きく見開かれる。
「私、トランクスのことが好き!!」
(――い、言った……! 言っちゃったよー!)
トランクスは驚いた表情のまま何も言わない。
その沈黙がたまらなく恥ずかしくて、ユメはまた俯き強く目をつむる。
(お願いっ……何か、言って……!)
「……ごめん」
ポツンと呟かれたその一言に、大きく目を開くユメ。
「オレ、そういうの苦手で……。多分、ユメの気持ちに応えられない……」
顔が、上げられない。
彼の顏が見られない。
……でも、とても困った顔をしていることはわかって……。
まだ差し出したままの両腕が、小さく震えた。
(私……ふられちゃった……?)
「ちょっと待ってよ!!」
どこからか、聞き覚えのある大きな声が上がった。