第1章 前編
どきどきどきどき……
ユメの胸は、今までの人生でおそらくは一番大きく高鳴っていた。
もう空は夕闇が近い。人気の無い小さな公園は、いつもなら心細いと感じただろう。
(……あと3分……)
ユメは、悟天が言っていた公園で一人トランクスを待っていた。
約束の時間が刻々と迫っている。
トランクスは約束した時間はしっかり守るから……。
ユメはチョコの入った小さな紙袋の紐を両手で強く握る。
(言えるかな……ちゃんと、好きって……。ううん、言わなきゃ!)
気持ちを落ち着かせるために大きく深呼吸をした、……その時だった。
「あれ? ユメ?」
ドキィ!!
上空からいきなり声が降ってきた。
……その声は、間違いなく待っていた人のもの。
「トランクス!」
ユメは彼を見上げてその名を呼んだ。
公園の灯に照らされて、彼の紫の髪がキレイに透き通って見える。
トランクスは不思議そうに周りを見回しながら、ユメの前に降り立った。
「おかしいな。悟天のヤツ一緒じゃない? あいつにココに来いって言われたんだけど……また遅刻か?」
今やユメの胸は爆発寸前、顔は沸騰寸前で真っ赤に染まっていた。
「もしかして、これから3人でどこかに遊びに行くの?」
いつものキレイな笑顔で言われても、なんだか喉が詰まってしまったように声が出ない。
「こんな暗い所にユメ一人で待たせて。そうならそうって言ってくれたらもっと早く来たのに……。結構待っちゃった?」
「う、ううん、今来たところ!」
「そっか。なら良かった」
ホッとしたように笑うトランクス。
どきどきどきどき……
(い、……言わなきゃ!)
ユメは一度ぎゅっと目を閉じてから、トランクスの顔をしっかりと見つめた。
「ち、違うの!」
「え?」
きょとんとこちらを向いたトランクスにユメは言う。
「私がトランクスに会いたくて、悟天に頼んじゃったの!」
「ユメが? ……オレに?」
トランクスが首を傾げる。
(言うんだっ!)
「……これ!」
バっと、ユメは勢い良くチョコを持った両手を差し出した。