第1章 前編
(そうだ……。今言わなかったら、きっと気持ちを伝えられないまま、一生、今の……「友達」のままだ……っ)
ユメは今度こそ、いつもの明るい笑顔で悟天をまっすぐ見上げた。
「ありがとう悟天! 私やる気出てきた。今日絶対トランクスに告白する。チョコ渡すよ!」
(後悔なんて、したくない……!!)
そんなユメを見てニっと笑った悟天は、いきなりユメの頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。
「ちょっ! 髪くずれるっ!」
「よ~っし! それでこそ僕のマブダチ!!」
「マブダチって、なんか古いから!」
……いつも応援してくれる悟天。
トランクスに告白することは、そんな悟天の気持ちに応えることでもある。
(がんばらなくっちゃ!)
そうユメが改めて決意を胸にしているとき、ふと気付いたふうに悟天が言った。
「そういえばさ、どうやって渡すか考えてるの?」
「あ。……考えてない」
一気に青くなるユメ。
(そうだ。渡す渡さないに夢中になって、どうやって渡すのかなんて考えてなかった!)
直接渡すなら、普通どこか人気の無いところに呼び出すのが定石だろう。そして告白……。
でも、
「ダメじゃん! トランクス君バレンタインめんどくさいって言ってたんでしょ? 授業終わったら速攻飛んで帰っちゃうよ」
そう、文字通りトランクスは「飛んで」帰ってしまうだろう。
「ど、どうしよう、悟天! ……い、今からでも会って、約束してきた方がいいかな!?」
思わず席から立ち上がるユメ。
「もうHR始まっちゃうよ! ……よし、僕にまかせて!!」
「え?」
「後で僕がトランクス君に会ってくるよ。放課後、適当に用事があるからとか言って、……学校はマズイか……、うん、あの公園にしよう! ほら、ちょっと行ったとこにある小さな公園、あそこに来てもらおう!」
「で、でも……」
「大丈夫だよ。僕が言えばトランクス君きっと来てくれるから! ……その後は、ユメうまくやってよね!」
言いながらユメの肩をぽんと叩いた。
「悟天……ありがとう!」
ユメはこの頼もしい友人に、心から感謝した。