第1章 前編
「悟天の奴は一緒じゃないんだ?」
「うん。悟天てばまた小テストで赤点とっちゃって、今補習受けてるよ」
そう言うとトランクスは“またかアイツ”と苦笑した。
その隣で一緒に笑いながら、内心ドキドキと動悸の治まらないユメ。
二人きりで話すのは初めてではないが、明日のことがあるためどうしても緊張してしまう。
(明日……明日、トランクスに告白するんだから……!)
「……ね、ねぇ、トランクス」
「何?」
ユメは思い切って訊く。
「あ、明日……学校来るよね!」
後から考えるとおかしな質問だったが、今のユメはただ必死だった。
「え? 明日? ……うん。来るつもりだけど……なんで?」
「え゛」
逆に聞き返されギクリとするユメ。
「え、えーっと……その」
「明日、何かあったっけ? ……あぁ、明日ってバレンタインデーか」
ドキィ!!
一気に心拍数が上る。
まさかトランクスからその言葉を聞くとは思わなかったから。
「そ、そうだっけ!? あ、あははっ」
焦って思わず知らないふりをするが、笑い声が乾いてしまった。
(ど、どうしよう! もしかして気付かれた!?)
内心ヒヤヒヤなユメ。
だが、
「そっか、すっかり忘れてた。……やっぱり明日学校休もうかなぁ……」
「……え?」
急に低くなったトランクスの声に、ユメは作った笑顔のまま固まる。
トランクスは苦笑しながら続けた。
「毎年異様に疲れるんだよ、バレンタインデーって。なんでこんな日があるんだろうなぁ……。ユメもそう思うだろ? 女の子だって義理だ何だって、いろいろ大変そうだし。めんどくさいよね」
そんなふうに、いつもの大好きな笑顔で言われても、ユメはやっぱり乾いた笑いを返すことしか、出来なかった……。
そして、
(どうしよう、悟天。……やっぱ私、無理かもしんな~い!!)
そう、心の中で情けない声を上げたのだった。