第1章 前編
「でも、……やっぱり怖い」
「え~? 今更? この僕がこんなに応援してるのに?」
「だって……トランクスって恋愛に全然興味ないみたいだから」
そうなのだ。
あれだけ女の子に人気があるというのに、一度も誰かと付き合ったという話は聞いたことがなかった。
それに比べ、悟天は今までとっかえひっかえ色々な子と付き合っていた。
なんだかんだで、悟天も結構モテる。ただ、どれも3ヶ月と続いた例がなかった。
ちなみに今はフリーのよう。
「今までのバレンタインだって、一つも受け取ったことないって言うし」
「あー、確かに。……その辺クールなんだよね、トランクス君て。もったいないよなぁ」
本気で羨ましそうな悟天にガクンと頭を垂れるユメ。……一気に不安になってしまった。
そんなユメを見て、悟天は慌てて言う。
「だ、大丈夫だって! 僕の見たところトランクス君、絶対にユメのこと気に入ってるから!」
「……そうかなぁ……」
そう言われてもやはり自信は湧いてこなかった。
そんな朝の風景も、先生が教室に入ってきて終わりとなり……
そして、放課後となった。
女子生徒は皆、ソワソワして帰途についていく。
きっとこれから明日の準備に取り掛かるのだろう。
ユメも例外でなかった。
もう材料は全て揃っていた。あとは早く家に帰って作り始めるだけだ。
と、意気込んで一人学校の門を出た、その時だった。
「ユメ!」
急にポンと後ろから肩を叩かれた。
「ぅひっ!?」
思わずおかしな声が出てしまった。
……だって、この声は……。
「ト、トランクス!」
ユメの横についたのは、なんと今の今までの頭の中を支配していたトランクス、その人だった。
「ハハっ! 今ユメすごい変な声出てたよ。ごめん、驚かせちゃった?」
そう笑いながら首を傾げるトランクス。
「え!? あ、ぅ、うん! ちょっとびっくりしちゃった。あははっ」
顔が赤くなってしまうのを必死に抑えつつユメは笑顔を作った。