第1章 前編
「ユメ! いよいよ明日だね、バレンタインデー!!」
「ばっ! バカ悟天!! 大きな声で言わないでよ!」
朝の教室、ユメは大慌てで突然の来訪者の口を塞ぐ。
「もし聞こえてたらどうすんの!!」
「ぷはっ! き、聞こえるわけないよ~。トランクス君の教室は3階なんだから」
大げさに深呼吸をしながら来訪者……悟天が言う。
悟天は一年生の時からのクラスメイトで、仲の良い友達だ。
と言っても、ユメの意中の人はこの悟天ではない。
「ト、トランクスにもだけど、他のコに聞かれてもマズイの!」
真っ赤な顔で極力声を落とし言う。
……ユメの好きな人。
それは一つ年上で、この高校の3年生である、トランクス。
だが彼に想いを寄せている者はユメだけでなく他に大勢いた。
トランクスは女子生徒の人気の的だったから。
顔良し、性格良し、頭良し、そしてスポーツ万能。
更には、将来大会社の社長という道が用意されている彼を、世間の女性が放って置くわけが無かった。
そんなトランクスと平凡なユメがどうして知りあえたか。
それはこの悟天のおかげなのである。
「どっちにしても明日のことは言わないでよ。……今から緊張してきちゃうから」
「ホント心配性だなぁユメは。大丈夫だって言ってるのに。間違いない。絶っ対に成功するって!」
自分の胸をドンと叩いて豪語する悟天。
それを聞いてユメはまだ赤い顔で恥しそうに俯く。
ユメは一年生の時に仲良くなった悟天から、幼なじみだとトランクスを紹介された。
それが全てのきっかけ。
第一印象は“キレイな男の子だなぁ”だった。
別に一目惚れとかではなく、初めの3ヶ月ほどは本当にただの友達感覚だった。
だが、悟天を通して徐々に顔を合わせることが多くなり、お互い打ち解けて仲良く話しているうちに、……結局、彼の魅力にハマってしまった。
そして、彼の方も自分に気を許してくれているように思え、嬉しかった。
……あくまで友達としてだけれど。
それから早2年。
彼がこの高校を卒業してしまう前にこの気持ちを伝えたいと、明日のバレンタインに賭けることに決めたのだ。
……が、