第2章 後編
「悟天!!」
友人の背中に、先ほどからもう何度目か呼びかける。
しかし悟天は一向にこちらを振り向いてくれない。
手を引かれたままの腕がそろそろ痛い。
もう片方の手に持ったままの紙袋が、やけに重く感じる。
……もうあの公園から随分離れてきてしまった。
(トランクス、もう帰ったかな……)
ふと考えた途端、ズキリと胸が痛んだ。
「……痛い」
「え!?」
ユメの呟きにやっと悟天が足を止め振り向いた。
「腕」
「あ。ごめんっ」
悟天は慌てた様子で手を離してくれた。
「……」
「……」
沈黙。
ユメは掴まれていた腕を摩りながら悟天の顔を見る。
だが悟天は珍しく俯いてしまっていて表情がわからない。
「……さっきの……冗談だよね?」
静かに訊く。
悟天は何も言わない。
「……悟天?」
「……だよ」
かすかに聞こえた声。だが、小さすぎて聞き取れない。
「え?」
「……そっ! 冗談。冗談に決まってるじゃん!」
悟天は顔を上げて笑った。
その顔はいつもの明るい彼のもので。
でもユメはその笑顔にほんの少しだけ、違和感を覚えた。
アハハといつものように子供っぽく笑って悟天が続ける。
「何? ユメってば本気にしちゃった? ヤだなぁー! 作戦だよ、さ・く・せ・ん!」
「作戦?」
ユメは訊く。
「あーやって言えば、トランクス君絶対僕らのこと気になるでしょ?」
「そりゃ、気になるだろうけど……。友達として、でしょ」
自分で言いながら、またチクリと胸が痛んだ。
友達……。
(トランクスにとって、結局私は「友達」だったんだ……)
本人からはっきりそう言われてしまった。
わかっていたことなのに、今更告白したことを後悔しても仕方ないのに……。
……もう「友達」にすら、戻れない……。
「違うよ! あれは……って、ユメ!?」
いつの間にか、ユメの目からはボロボロと大粒の涙が零れ落ちていた。