第1章 紅薔薇【黒バス:火神】
ジロジロと全く信用していない目で私を見る火神。
不意に大きな手のひらがお尻をなで上げた。
「っきゃあぁっ!?」
びくん、と身体が跳ね上がる。
全身が緊張に強張る。
「こんな反応してるような人がオレより慣れてるとは思えねーよ、ククッ」
まるきり馬鹿に仕切った笑いで満足そうにお尻をなで続ける。
「やべー、めっちゃさわり心地サイコー…」
あからさまに耳に息を入れて囁いてくる。
怒りと恥ずかしさで顔から火が出る様だ。
とはいえ、やられっぱなしではいられない。
まずはホフク前進で火神の身体を登って目線を同じ位置にする。
腰を抱えられていて動きにくいなか、なんとか目的地に辿り着く。
「?」
ニヤニヤと笑いながら私の動きを見る火神に一泡吹かせてやろう。
恥ずかしさを押さえ込んで、ヤツの頬に手を当てるとゆっくり口づける。
ふっくらと柔らかな感触。
軽く吸って唇を離す。
そして、また押し当てる。
短いキスを何度も繰り返していく。
お互いの吐息だけが熱く耳朶を打つ。
火神が息をするために開いた隙間から舌を滑り込ませる。
くちゅ、と湿った音が淫靡に響いた。
お互いの舌を絡めて、吸い上げる。
頭がぼんやりしてくるのに抵抗して、やっと唇を離す。
息が荒く、かなりの時間キスしていたことが判る。
(これでどうだ!)
ぼんやりと潤んだ瞳の火神を自慢気に見下ろしながら笑ってやった。
「これが、大人のキス。どう?勉強になった?」
「………」
二の句が継げなくなった火神に勝利を確信した私は身体を離そうとする。
……離そうとしただけだった。
未だにがっちりと腰を掴まれていて立ち上がれない。