第8章 それ見た事か。
「あのー・・・それで、この船?どこに向かってるんですか?」
気流に乗り、速度が安定し、暫く経った所でようやく私は今一番気になる事に思い当たった。
今更訊くか?そんな顔でミストさんは軽く首を傾げる。
「取りあえずの目的地は、僕の国さ」
「いや、それどこなんですか」
「地名で言って判るのかい?君はこの世界の者ではないのだろう?」
「そうですけど・・・ってあれ、何でそれ知ってるんですか?」
確かに私がこの世界に来た時、それなりに目立っては居たらしいけど、違う国の人が聞きつけるには早いんじゃないの?
「それについてなんだが・・・ん、そろそろ頃合いか」
船内の計器らしきものを見ながらミストさんは呟いた。
「丁度良い。今から少しだけ船を着陸させる。君は降りる必要はない。だが、有意義な物ではあるはずだ。そこの階段から甲板へ上がってみると良い」
そう言って部屋の隅にある木製の階段を指し示した。
「・・・落ちたりしないですよね?」
「しがみ付いていれば平気さ。そうだな、心配なら僕が一緒に行こう」
あまりにナチュラルにミストさんに片手を差し伸べられ、つい手を取る。
この船に乗るまでの彼是でまるで考えていなかったけど、ミストさんはとても綺麗な人だった。
イケメン、というより「美男子」かな。
忠誠的な顔立ちで、顔が白くて・・・
ちょっとキザなのが私の世界観とは合わないけど、それが逆に新鮮でドキドキしてしまう。この世界ではモテモテなんだろうな。
男しかいないけど。