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異次元ひねくれライフ

第8章 それ見た事か。



そうして甲板に上がった私の前髪を、強い風がすり抜ける。


同時に視界一杯の青い空。
少し寒くて両手で身体を抱きしめていたら、ミストさんが羽織っていたマントを肩から掛けてくれた。

「あ、ありがとうございます」

「その恰好ではここは寒いだろう?」

こんなに開放的な空はどれくらいぶりだろう。

あの国から脱出できたという安堵と、収まって来た興奮。
加えてこうしてちょっとした事に気にかけてくれた事。
フィルさんだって、私の手が汚れてしまっただけなのに、わざわざ拭く物を貸してくれたり。

少なくともそれらの親切には、エアフルトの城の中の「理由のある親切」とは別の物に思えてちょっと泣けてきてしまった。


「ん?どうかしたかい?」

「いや、目にゴミが・・・もう大丈夫です」

「そうか。どうだい?空の上は」


最高、だった。元の世界にも空を飛ぶ乗り物はいくつかあるけど、こんなにリスクが高そうで、尚且つ空自体を感じられる乗り物は、乗った事も機会も無かった。


「・・・最高の気分!」


風の音にかき消されないように、私は大きな声で返事をした。

その様子にミストさんは満足そうに微笑んだ後、こう返して来た。


「その最高の気分をさらに高めてあげよう。平地になっているあの辺り。見てご覧」


言われた通りに甲板から地上を見下ろすと、そこにいくつか小さな黒い点があった。


人だ。


その隣のちょっと大きいのは、馬、かな。


やがて、船はゆっくりと高度を下げ、その黒い点は徐々に輪郭を確かなものにしてゆく。


それらの正体に気が付いた私からは今度こそ涙が零れ落ちていた。


そこに立って居たのは、紛れも無いクライブさんとステアだった。


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