第8章 それ見た事か。
「・・・抵抗、しないのかい?」
促された椅子に座り、思考回路が滅茶滅茶になっている私の顔を覗き込む黒マント。
そんな事聞かれても、抵抗したら解放してくれる訳ないだろうし、
よしんばこの船のどこかから今飛び降りたとしても、結局あの国に逆戻りだ。
そうなったら待っているのは再びあの恥ずかしい儀式なのは間違いない。
それなら、このままどこかに連れて行かれる方が先が明るい気がする。
なんとかそれを言葉にすると、黒マントは再び莞爾と微笑んで見せた。
「なんだか意外だよ。そこまでちゃんと考えているんだね」
さらっと失礼な事を言われた気がする。
「はぁ・・・」
「うん、まぁ賢明な判断だよ、君。そんなに心配しなくとも、君に危害を加えようとは思ってはいないよ。だからそんな顔をしないでくれまいか?」
「ボス、その前にその仮面、いい加減外したらどうですか?説得力無いですよ」
「あぁ、そうだったな。失敬」
好青年に促され、黒マントは仮面を外した。
そこから現れたのは、中性的でとても綺麗な顔。
サイドに染めた髪と同じ瞳が切れ長で、びっくりするくらい色が白い。
「やぁ。改めまして。またお会いできて光栄だよ」
そう言って会釈をしてくる。