第8章 それ見た事か。
天井の梁に到着した私は、その高さに思わず黒マントにしがみ付く。
黒マントの腕がそっと私を比較的マシな足場に降ろすと、前方を指し示す。
そこには、この一味が密かにやったと思われる大穴が壁に空いていた。
「歩けるかい?お嬢さん。もう少しだけ頑張って頂けるかな」
後ろから黒マントの声が掛かる。
気のせいか、さっきよりも固い口調がほぐれているような。
「ちょ、ちょっと待って、お・・・落ちる・・・!」
平均台よりも幅のある梁は、大人二人が乗っても軋むような様子はない。
だけど、落ちたら無事じゃ済まされないのは明らかだ。
このプレッシャーの所為で、地上なら歩ける幅なのにとても狭く感じてしまう。
覚束ない足取りで、なんとかバランスを保持する。
し・・・下向いたらダメなやつだ・・・
「大丈夫。もうすぐだから」
情けない恰好で前進して行く。何でこんな事に。
とは言え、逃げる為にここからダイブなんて事は絶対無理だ!
あと数メートル、という所で、急に私の膝がカクカクとまともに機能しなくなってしまった。
そりゃそーだ。恐いもん。すげぇ恐いもん。
座り込んでしまいそうになった。
その時、壁の大穴から誰かが出て来たかと思うと、私の手をぐっと掴み、引き寄せてくれた。