第8章 それ見た事か。
踊るような仕草で優雅に短剣を振るう怪人黒マント。
余裕があるのか笑みまで浮かべている。
対するクライブさんは一瞬の気も抜けない状態。
いや、私が後ろに居るからなんだけどさ・・・
周囲の兵士や貴族もといギャラリーは手を出せずに一定の距離を持ったまま。
これが舞踏会とかなら素敵なんだろうけどね!
今、私の命とか掛かってるし!クライブさんもだけど。
不意に黒マントが刃を振るう手を止め、大きく下がったかと思うと天井に向かって指を鳴らした。
その瞬間、頭上のシャンデリアから奴の仲間と思わしき男の人が降りて来た。
そいつは私とクライブさんの間に着地すると容赦無くクライブさんに斬りかかった。
「危ない!」
叫ぶと同時にクライブさんは振り返り、その剣を寸での所でバインドさせる。
分断された私とクライブさん。
相手の狙いがそれだと気付いた頃には遅かった。
「わああああっ!?」
あっという間に黒マントは私との距離を詰め、後ろから胴を掴まれたと思ったら、そのまま体が浮かび上がる。
びっくりして黒マントを見ると、手首からワイヤーフックのような物を天井まで伸ばし、それを使ってぶわっと空中へと飛び上がる。
この世界の怪しい人はその道具を持ち歩くのがマナーなのか?
馬鹿げた疑問をもたげて顔を顰める私。
そんな私を視て、黒マントは仮面越しに莞爾と笑っている。
せめてここはお姫様抱っこあたりで手を打ってほしかった。
・・・あと多分、今パンツ丸見えだ。
こうして下半身に怒声や奇声、嘆き声なんかを投げつけられながらモロパンを置き土産に私は天井の梁へと連れ去られていった。