第8章 それ見た事か。
心に引っかかるのは二つ。
ひとつ目は、クライブさんの行動について。
・・・確かあれはこの世界に落とされて、城に来た次の日くらいじゃなかったっけな。
あの時、確かステアは
「クライブさんは演習だと右に出る者は居ないのに、実践ではまるきりダメ」
だとかそんな事を言っていたと思う。
なのに、目の前では思案を巡らせている私の2~3歩先で、今も黒マントとの攻防を繰り広げている。
なんだぁ。普通に強くて格好良いんじゃんよ。
でもそうするとステアの言葉に矛盾が生じる。
どういう事だ、これ・・・?
それと気になるもう一つの事。
目の前の黒マントについて、だ。
少し平静を取り戻して、クライブさんと戦う姿を見ていると、
どうにもどっかで会ったような気がしてならない。
仮面で顔は隠れている物の、その先から覗く黒くてサラサラしていそうな黒髪に、一筋だけメッシュの様に一部をワインレッドに染め上げている。
あの人、どこかで確実に会ってる・・・気がする。
そこはかとなく優雅でキザな動きとか。
・・・だけど、何処で見かけたのかまでは全然思い出せない。
勿論、敵なのか味方なのかすらも。
この二つが意味する謎は、私には分からない。
ふとステアの方を振り返ると、既にそこに彼の姿は無く、混乱に乗じて逃げてしまったらしい。
完全にある意味アウェーな私はぽつねんとクライブさんの後ろで守られている以外、やる事が無かった。