第6章 脱兎さん
貴族みたいな人に教えてもらった通り
しばらく進んで行くとやがてバラ園が見えた
通るだけなので温室には入らないが
ガラス越しに何種類ものバラが咲き誇っている。
いつか天気の良い日にここで優雅にお茶なんてしてみたかったなぁ
さらに進んでいくと、落ちてゆく夕日のあたりにうっすら茂った森と建物が見えた。
あのうっすら感。絶対アレでしょ!
ステアに会えるかもしれない!
思わず小走りになり、靴擦れもかまわず再び全力ダッシュへ戻っていた。
「す・・・すびばぜん、ステアは・・・どこに・・・」
走り出した位置から意外に遠く、その建物の集合体に辿り着いたころには私は汗だくでボロボロのすごい状態だった
そんな私を少し煩わしそうな様子で、ローブの男はそっけなく答える
「ステアあいつはメシの支度中だよ。その後は風呂焚きと用具の手入れ。朝食の下ごしらえに・・・」
待て待て。なにそれ?奴隷なの!?
「まぁ、今日は会えないだろうから帰んな」
「毎日彼はそれ、全部やってるんですか?」
「いや、ここ数日ロクに修行もせずにフラフラどっか行っては帰ってきてな。聞いても誰にも話しゃしねーから罰ってわけだよ」
え・・・それって私が呼び出したから・・・
てっきり司教様とかから簡単に事情とか行ってると思ったのに
「で、お前さんは何者なんだよ?」
「わた・・・・僕は、ステアの友達です!ステアは僕の、大事な友達なんです!」
ローブの男をすりぬけてまたダッシュ。
夕餉の準備の香りがする方向を頼りに私は今度はステアの為に走り出した。