第5章 巧みに躱せ、最悪のルート
あっという間に遠ざかる声
結局私が中庭に滞在できたのは
ほんの15分足らずの出来事だった
午後になり
大きな紙を丸めて小脇に抱えたダリさんが部屋に来た
「それ、なんですか?」
「貴女に必要な物です」
そう言いながら紙を広げ、壁に張りつけて行く
いくつかの城の絵や関所、森、川なんかに名前が書いてる
「あ、地図!」
「正解。今いる場所と、規模を知ってもらう為に持って来ました」
この人はなんて勘がいいんだろう
私の必要な物を先回りしてくれるとは
「早速このエアフルトの領土を説明します」
羽ペンの先を指示棒代わりにダリさんの説明が始まった
「右下の城が今ここにいる場所、エアフルトの城。で、この辺りまで領。まぁ殆どが農地なんだけどね」
「ダリさんに質問!この地図、随分真四角な気がします!端同士が繋がってないというか狭いというか」
もしかしてこの星丸くないとか!?
「うん、本当はこの地図の外側にも世界は広がってるんだけど、人間の領土は全部でここまでです。この外は他の種族ではびこっている。迂闊に立ち寄れません。逆に言うとこの区域は人間が安心して暮らせる保証があるって事だ。まぁ、この地図全域だけでもかなり広いんだけどね」
種族と聞いて私はワクワクした
だって、いかにもファンタジー!
頭の中にエルフやドワーフの冒険活劇が繰り広げられる
「貴方の元居た世界に人間以外の種族は?」
「いないです!どんな種族がいるんですか?」
「んー、全部人間が把握しているわけじゃないが・・・そうだな、隣の国では同盟を結んだヒポやパロが街で暮らしていますよ」
「ヒポ・・・・?パロ・・・?」
「彼らが名づけた訳ではないけど、パロットに似ているからパロ族。ヒポポタマスに似ているからヒポ族。で人間の間では通ってるよ」
パロットって確か・・・
インコじゃなかった!?
小さい頃動物の形のビスケットに印字されていた気がする。
・・・そしてヒポ。
・・・・カバじゃん!
私の世界ではそれ、妖怪って言います、多分
エルフやドワーフ達の妄想が音を立てて崩れる
「彼らは人間の言葉を話せるし、基本的にはうまく馴染んでるみたいです。隣のこの国・・・クライブ君が向かった国だよ」
最後の言葉は小さくてもハッキリ聞き取れた