第5章 巧みに躱せ、最悪のルート
「アリーチェ!これどういう事?」
中庭に通されたステアが驚きの声を上げる
そりゃあちょっと中庭に出るだけでこの騒ぎなんだからね
小さめな庭の真ん中には噴水、周りには薔薇
そして私を取り囲みまくる従者達
万が一の事があってはいけないって事で
昨日付き添いを断った残りの従者達がぞろぞろ全部で十人
「逃げようとか考えてるわけじゃないから!」
実際逃げたいけどこの状況じゃまず無理だし
ステアに迷惑がかかる
「それは良いとして、クライブさんの事なんだけど」
なるべく従者から離れて声をひそめる
「もう聞いたの?クライブさんが発ったのは今朝いきなりだったんだよ!僕も何だかわからなくて」
「ステアなら何か知ってるかと思ってさ」
「ううん、僕も何も知らないんだ。昨日の晩寝る前に廊下ですれ違ったけどいつもと変わりはなかったし」
「どうしよ。あのねステア、私どうやらこの国の王様が帰って来たら王様と結婚させられるかもしれないの」
「えっ!?」
「昨日の夜にクライブさんが教えてくれたんだ」
「女性はアリーチェだけだもんね。それは分かるけど君はそれでいいの?」
「良いわけないッ!!」
うっかり大きめの声を出してしまったので従者が何事かと寄ってくる
虫がいたとか適当にはぐらかして再びステアとひそひそ話
「王様が帰ってくる前に私どうにかしてこの国を抜け出さないと」
何度も言うけどおっさんは嫌だ
「頼りになる筆頭のクライブさんはいなくなっちゃうし、お願いステア、力を貸してほしいの!」
「それはもちろんだけど、僕一人でどうにかできる事じゃないし。ダリさんにも相談してみたら?」
「ダリさん昨日会ったばかりだけど信じて良いと思う?」
「僕らだって同じようなものでしょ」
苦笑しながらステアは、より小さな声で呟いた
「この国出身の人は、気を付けた方がいいよ。僕やクライブさんやダリさんは他から来たからね」
「それどういう・・・」
「アリーチェ様、そろそろお部屋にお戻りください。お体に障りますよ」
言葉を遮るようにして従者がステアと私の間を割って入る
「その辺の事はダリさんに聞くといいよ!」
中庭から追いやられるステアが、振り返り私に言う