第5章 巧みに躱せ、最悪のルート
なんだか吹っ切れた私は司教様の返事を待つ間じっとしていられなくなり、
窓を開けて歌ったり「早くここから出せ」とだだをこねたり、「帰りたいよー!」なんて叫んでみたり、ちょっとした狂人状態だった。
不思議なもんで、声に出せばそれだけその感情が強くなる。
従者の子たちに罪は無い。
彼らはあくまで課せられた仕事をしているだけに過ぎないもんね
彼らには可愛そうな事をしたなぁ。
3杯目の『心を落ち着かせるお茶」を振る舞われる頃に
司教の元へ使いに出た従者が戻って来た
「アリーチェ様、この部屋からすぐの中庭の一つなら許可がおりました。ただし人払いをしなければならないので、あともう少しお待ちください」
やった!
外出られる!
ここから逃げられる訳じゃないけどシャバの空気だよ!
それに城に来る前は夜だったから城自体がよく見えてなかったし
出来る範囲で観察しなきゃね。
外に出られるワクワクを従者の次の言葉が私を凍り付かせた
「アリーチェ様、護衛の者なんですが、クライブ様が今朝から城を出てしまっているので他の者に変わりますが宜しいでしょうか」
え。
「あの、クライブさんは何処に・・・?」
「それが、急遽隣国への視察となったらしいんです。詳しい事は私にはちょっとわかりかねます」
「え、クライブさんいつ帰って来るの?」
「わかりません。何しろ隣国まで馬を使っても2日はかかりますから」
は。
何故このタイミングで!?
ちょっと困るんですけど!かなり!
もしかして陰謀ですかね?
「じゃあ、ステアを。彼を呼んでくれる?」
「護衛に魔法使いですか。しかも見習いですよ?それはちょっと」
「じゃあこのお城は、中庭をうろつくだけでも剣士がいないと脆いお城なの?」
「そんな事はありませんよ!くれぐれも王や司教様の前で言わないでください」
意外にもこの挑発に従者が感情を露わにする
「じゃあステアを呼んで。どうせ貴方たちもついてくるんでしょう?」
「・・・わかりました」