第5章 巧みに躱せ、最悪のルート
「さらに念のため聞くけど、私に拒否権は?」
「あったら先にそれを伝えている」
そうですよね
「アリーチェ、本っっっっ当に男じゃないんだよな!?」
拝むような目でクライブさんが見つめてくる
「絶対女です!一応聞くけど、王様何歳なの?」
「今年で48になられる」
「イヤだー!クライブさんどうしよう?私結婚とか嫌だよ!会ったこともない人におまた見られて結婚とか、ありえないよ!?」
「気持ちはわかるが、王相手に俺にはどうしようもない」
もしや、あのしつこい程の採寸は
婚礼の儀の為のドレス用だったのでは・・・!
「逃亡」の方法を必死に考えてみる。
でも逃亡中にまた山賊の類に遭遇したらどうなるだろうか
そもそも逃げようものならこの国の人達、超必死で追っかけて来る事は間違いない
異世界トリップの末唯一無二の存在として大事に扱われて王様と結婚!
おとぎ話ならそれでもいいかもしれないけど
そうはいかん
おっさんは嫌だ。
これが若くてイケメンな王様だったらちょっと傾いたかもしれないけど。
「とにかく何の前触れもなしよりはと思って伝えに来た」
もしクライブさんが一緒に逃げてくれるならどれだけ心強いだろう
でも万が一逃げきれなかった時、クライブさんが無事でいられるはずがない
あぁもう泣きたくなってきた。
歯を食いしばり涙をのみ込む。
「クライブさん、ありがとう」
拳を握りしめてなんとか声を絞り出す。
「アリーチェ・・・また明日、護衛の時にでも」
察してくれたのか、クライブさんが部屋を出て行った
ふらふらとベッドに倒れ込み、うつ伏せのまましばらく私は動けないでいた。
結局、なんの解決策も浮かばずにいつの間にか眠りに落ちていたらしく
目が覚めるとカーテンの向こうには暁の空が広がっていた。
金具を外し窓を開ける。
朝特有の水を含んだ冷たい風が私を包む
深呼吸して、体中に空気を行きわたらせると目が冴えて来た
このまま泣いてるだけじゃダメだ
何か事を起こさないと。
気合を入れるために、開け放した窓に向かって叫ぶ。
「あ゛あああああーーーーーーーーッッッッ!!!!」
私の渾身の雄たけびの所為で何人もの従者達が慌てながら部屋に入ってきたのは言うまでもない。