第1章 テロみたいなプロローグ
いぶかし気な私の態度も気にせず、少年は慇懃な態度で話を進める
「そんな生き方、見てるこっちが嫌になります。なので勝手に貴方を選ばせて頂きました。おめでとうございます。」
「はぁ??」
「貴方は今から人々の願いの化身になってもらいます。丁度人手が足りていない所があるんです。」
ぽかんと口をあけたままの私に、少年が判りやすく説明してくれる
「つまり、今から貴方を別の世界に連れて行きます。貴方がその世界を救えば成功です。まぁ、脱出ゲームみたいなもの」
「救う?私が?魔王とか倒すの?」
急な展開に飲酒で服薬、寝起きの私の頭はついていけない。
「別に魔王とか居ないです、多分。救うっていうのは、必ずしも戦う事じゃないですよ。あんたちょっとゲーム脳過ぎ」
「急に口悪くなった・・」
「えー、おほん。とにかく、何らかの形で今から行く世界の問題を解決してください」
「ちょっと待って、現実世界の私はどうなる!?」
「あんたさっき『人生どーでもいぃー』なんて言ってたでしょ」
「や、そうだけど!」
家族とか、失踪とか、事後処理とか、SNSとか、家宅捜査とか、PCとか・・・!
連想ゲームの様に色んな心配が噴き出る。
人生はどうでもいいけど、それなりに準備ってものが必要だ
「心配いらないよ。そこは逆浦島方式。時間軸なんてきっとあんたの世界だと10分で事足りる。他に質問は?」
「もし、『その世界』とやらで死んだらどうするの?」
「それは普通に死亡」
「死体はどうなるの!?」
「うーん、その世界に置いとくか、あんたの部屋に戻しておく。イヤなら死なない事だね」
「1UPの方法は?」
「あんた本当にゲーム脳だなぁ。そんなのないよ。はいじゃあ質問タイム終わり!後は自分の目で見て確かめな」
「最後!君、何なの?」
「水先案内人」
そういいながら少年は私に向かって水鉄砲を打つ
先からは水ではなく、大きな虹色のシャボン玉が放たれ、私を包んだ