第6章 distance
【M】
事務所の懇意にしている病院に来た。
翔は今、特別個室で点滴を受けている。
マネージャーが、副社長と専務が後から来る、と言って外に出ていった。
「翔。ごめん、ごめんな…」
翔の手を握る。涙が溢れる。
いつもは赤い唇が、紫がかっている。
そっと、唇に触れてみる。
柔らかい…。
口付けてみる。
久しぶりの感触…。
もう…1回だけ……。
ヤベッ。久々すぎて。止まんね…。
角度を変えて、舌を入れる。
ちゅ、ちゅぷ、という音が室内に響く。
翔は鎮静剤が効いているのか、目を覚まさない。
「…なんか、イケナイコト。してるみたいだ…」
専務「そうね?意識の無い人間襲ってるんだから?…そうなんじゃない?」
声のする方に、顔を向ける。そこには、専務と副社長が腕組みをして、俺を見ていた。
副社長「櫻井、どうなの?」
出入口扉の横に立っているマネージャーに話し掛ける。
マネージャー「腹部を何度か殴られているみたいで…。少し、内臓が弱っています。それと…あの…」
副社長「何?はっきりと言いなさい。アソコは?」
マネージャーが、俺の顔を見る。
専務「松本のことは、気にしなくていいから!早く言いなさい!」
マネージャー「は、は、はい!あの…少し、切れているそうです。て、手前だけ…で、その…腸…は、大丈夫だそうです…」
副社長が「そう」とだけ言って、俺の側に来た。翔の顔を見る。
副社長「櫻井。怖かっただろうね?」
そう言って、翔の頬にソッと触れる。
副社長「二宮達から聞いたわ。岡田達、櫻井をあんたと大野から盗りたかったらしいわ。これから岡田と三宅には無期限謹慎させるから。V6は、暫く活動休止ね…それと、松本。あんたは、櫻井に付いててやりな?襲うんじゃないよ?」
「はい!自信ねえすけど…でも無期限ってのは、重くないっすか?」
副社長と専務が、顔を見合せて驚いている。
専務「松本。貴方から、そんなこと聞けるなんて…クビにしろ!とか言うのかなって思ってた。大分大人になった?ふふふ…」