第6章 distance
【S】
スタッフから、予定していた取材が、明日に変更になったと聞かされた。取材時間までに、選手の方々が、東京に帰って来れないとのこと。
急に、オフになっちゃったな…。一旦、家に帰るか?
資料も大量にあるから、鞄パンパンだしなー。置いてから、出掛けるか。
「ただいま~」
静かな室内。
あれ?ニノ、居ないのか?オフだって言ってたのに…。
俺は、とりあえず鞄を客間に置きに行くことにした。
ガチャリ、と玄関扉が開く音。
誰か帰ってきた。確認しようと、リビングに向かおうとしたら…。ジーパンの後ろポケットから、着信を告げるバイブ。“智くん”の表示。
何だろう…?
『はい。智くん?』
智『翔ちゃん。今、どこに居る?』
智くんからの質問に答えながら、ベッドに腰掛ける。
客間のドアを閉め忘れていたことを思いだし、立ち上がる。
開いているドアの側を岡田君と健君が通りすぎた。通話中で、挨拶出来ないので、2人に会釈だけはした。
智『松潤に多分そこバレた。今、相葉ちゃんと向かってるから、待ってて!』
客間のドアの内鍵を掛けようとする手が止まる。
『…え?潤が?…わかった…。俺も話しなきゃっておもっ…うわっ?!何?』
いきなり、目の前が真っ暗になった。何が起こったのかと、確認しようとしたら…。ベッドに突き飛ばされた。
『や、やめて!ん~、イヤだぁっ…』
急に唇を塞がれる。見えないからか、意識が集中する。
二の腕に何かが巻かれる感覚。身を捩って、逃れようとするけど。全く動かせない。
スマホが、手から離れる感覚。そのあと、カシャンッとどこかにぶつかる音がした。
健「櫻井。一回だけヤらせろよ?初めてじゃねえんだから、いいだろ?」
耳元で、声がする。健くん?何で?
背中からも岡田くんの声?
准「松潤にここのこと、バレたんだろ?ここに来るんか?俺さー。2週間、我慢したんだ。お前…ヤバイくらい色気有りすぎ…。それに…警戒心無さすぎ!クククッ」
俺は、2人から逃れようと、力一杯暴れてみるけど…、格闘技をしている岡田くんに敵う筈もなく。
後頭部に鈍い痛みが走って。そのまま、意識が遠退いた。