第6章 distance
【S】
あれから、どうなったんだろ?
何回、見たかわからないスマホ。
誰からも、なにもきてない…。不安だけが増していく。
「今は、仕事中!集中!」
声に出して、自分に言い聞かせた。
「それでは、リオオリンピックで目指すは勿論…」
選手「そうですね。綺麗な色のメダルですね!」
「はい。本日は、お忙しい中、ありがとうございました。リオでお会いしましょう!〇〇選手でした。ありがとうございました」
選手の方達、関係者の皆さんと握手をして、収録は終了した。
現場を後にして、ロケバスに乗り込む。
1人になると、昼間の光景が思い出され泣きそうになる。
ネクタイを緩めながら、スマホを見る。
相変わらず、何もきてない。俺から、LINEしてみるか?えーっと、ニノに…
車の窓をコンコンと叩く音。スタッフかマネージャーと思い、ドアを開けた。
和「翔さん。今日は、もう終わりでしょ?さ、帰りましょ!」
俺は、ここに居るはずのない人物に驚きを隠せない。
ニノは、俺の手を引き、ニノの車の助手席に乗せる。
和「マネージャーとスタッフには、OK貰ってますから。このまま、何も聞かずに私に付いてきて下さい?解りましたか?」
ニノの有無を言わさない行動に、ただ従うしかないと思った。
「解った。でも、これ衣装だよ?返さないと…」
ニノが、俺の格好を見て、少し間が空いてから、後部座席に置いてあった服を渡してきた。
和「これ、着てください。私のだから、少し小さいかもだけど…」
ニノから、借りた服に着替えた。ニノの言う通り、少しキツかった。マネージャーが、見送りにきたから、衣装を渡した。
マネージャー「お疲れ様でした。明日は13時にお迎えに行きますので」
和「あ、明日は俺が送って行くから。場所どこ?」
マネージャー「宜しいんですか?明日は、TV紙の撮影ですので…」
和「解った。責任持って、連れていくよ。お疲れ様」
車が、発進された。
どこに行くんだろ?聞くなって言われたしな…。運転するニノの横顔をずっと眺めていた。