第5章 僕は、便利屋。③
「おい、何でここで寝てた?名前は?年は?」
捲し立てるように、質問する。普段、他人に興味が無い俺にしては珍しい行動だ。
〇〇〇?「………」
徐に、ジーンズの後ろポケットから、メモ帳を取り出して、何か書いているみたいだ。
〈あなた 誰?〉
誰?じゃねーだろ(`Δ´)こっちが、聞いてんだろーが!
〈しゅうはどこ?〉
「しゅうって、誰?…つうか、お前が誰?話せねえの?」
コクりと頷く。また、メモ帳にペンを走らせる。
〈櫻井翔〉
「お前の名前か?」
コクりと頷く。
男…か?髪が腰まであって。背が俺の肩のところくらいしかなくて。顔もよく見たら、女の子みたいだ。でも、名前をみると、男…だよな?
『男だよ』と、口パクで言ってきた。 まるで、俺の心を読んだみたい?
〈心は 読めないよ〉
「!!!」
俺、声に出してたかな?
〈なんとなく そう思ってるかな?と〉
俺が、言ってないのに…。次々と俺の考えてることを当てていく。不思議なやつ…。
〈あなたは?〉
「…俺は、大野智。便利屋やってる。…お前、いや、櫻井さんは何で、こんなところで寝てたんだ?」
〈しゅうと逃げてきた 疲れて 休んでたの〉
「どこから?何から逃げてきた?しゅうって誰?」
俺の顔をジッと見てくる。
〈しゅうは 僕の双子の兄だよ 逃げてきたのは〉
そこまで、書くと、手を止めた。…震えてる?
ここでは、言いたくないか?
「とりあえず、行こう」
俺は、櫻井翔さんの手を引いて、ツルさんの家に向かった。
こんな素性もわからない人間を、助けたい欲求にかられた。いつもの俺なら、あり得ない。他人に、深入りしないようにしているから。