第5章 僕は、便利屋。③
車を、吉田の婆さんの家の近くの駐車場に停める。
「おい、ツルさん。来たよ」
引き戸をガラッと開けて、吉田ツルが、出てきた。
吉「おう!待ってたよ。今日も、多いよ。内職の数、増やしたからね」
この、吉田ツルという婆さんは、旦那がかなり前に死んでから、独りで暮らしている。子どもが居ないせいか、俺をすごく可愛がってくれる。
1年前に膝を悪くしてからは、頻繁に依頼してくるようになった。
ツルさんが、指差した先を見ると、ゴミ袋が10袋はある。
吉「いつも、ごめんよ、智。終わったら、お団子食べようね」
ツルさんの手作りの団子は、めちゃくちゃ旨い!それがあるから、頑張れる。
仕事をしている間は、〇〇とのこと、忘れていられる。
「先に、ゴミ出してくるね。後で、布団干すから」
吉「ああ、頼んだよ‼」
ん?何だ?マネキンか?
近づいてみる。
「…人?……とりあえず、ここに居ると邪魔だから、退かすか」
ゴミの中で、スヤスヤと寝ている。こんなところで、よく寝ていられるな。
グイッと腕をつかみ、引っ張りだす。
「軽っ!…っつうか、子どもか?」
俺の胸の中で、立ったまま、スヤスヤと眠るこいつ。ものすごく、細い。それに、小さい。俺も、小柄なほうだけど。
「おい、起きろ!」
完全に、俺に体を預けきっている。
こいつ…!
肩を掴み、ブンブンと揺らす。
パチッと目が開く。
「やっと、起きたか…。何でまた、こんなところで寝てるんだ?」
〇〇〇?「………」
俺をジッと見てくる。前髪が目にかかる程長いから、表情が読み取れない。