第3章 シグナル。
リビングから、ガシャーンッと、音がきこえてくる。父ちゃんが起きて、リビングのソファーに躓いて転んだんだ。これもいつもの朝の光景。
「ほんと、ドジだな?父ちゃん。ほらっ、立って」
すまんな、なんて言いながら、俺の手を取って立ち上がる。頭が寝癖で、めちゃくちゃだ。もう、45才だっていうのに…。抜けてるんだよなぁ。
翔「父ちゃん!ぉはよ!頭バンバンだよ?」
和也に幼稚園の服に着替えを手伝ってもらいながら、翔が父ちゃんを指さす。
和「翔、じっとしてろよ?…お前も、寝癖すごいぞ⁉」
見ると、後頭部がピンピンはねまくっている。和也が手で直す。
父「翔、おはよう…。頭バンバン、お揃いだねぇ」
父ちゃんが、ふわりと笑う。
「あっ!父ちゃん。今日は、早く会社行かないといけないんだろ?さっさと着替えて、メシ食えよっ」
父ちゃんは、まだパジャマを着ている。俺の言葉で、自分の状況に気付いた。
父「ヤバい!会議があるんだった!急げ~、おれ~」
バタバタと自室に駆け込んでいく。
翔「父ちゃん、いちょれ~」
和「翔、急げ、だ・よ?」
翔、また呂律がまわってないぞ。それに、また口にいっぱい詰め込んで…リスみたいになってるぞ。ふふ。
父ちゃんが、準備してさっさと朝メシを食って、出かけて行った。
「俺が、後片付けしておくから、和也、翔を頼むな」
和「了解でーす!」
和也と翔が出掛ける。一気に静けさが襲う。後片付けが終わり、時計を見ると、もう家を出ないとヤバい時間だ。
今日は、一限目から、講義を受けるからなー。遅刻しないようにしないとな。
「母ちゃん、行ってきます」
仏壇に、手を合わせて、家を出た。