第13章 I'll be there
男は呼吸を整えながら、俺から視線をそらさない。
俺も、蛇に睨まれた蛙状態で…。
背中にヒヤリとしたものがつたう。
暫くして、男が女性の頭を撫ではじめた。
男「ふふふ。とっても良かったですよ、向井さん」
ええっ!向井さん⁉
~って、月1で来店されるお客様じゃないか⁉
向井「ほんとう?じゃあ、あたしと約束通り付き合ってくれるんでしょ?」
男「ええ、いいですよ」
向井「やった♪あたしも約束通り、あなたを指名するからね」
男「ふふふ。ありがとうございます。ああ、そうそう。さっきも言った通り…」
向井「わかってますって。あたしとの関係は誰にも話さない。あたしから連絡しない。でしょ?」
男「ええ。それと、私の言うことにNOは無いですからね。それじゃあ、今日はもう帰ってください」
向井「え?やだやだ。もうちょっと一緒にいたい!」
男「向井さん。私、急用ができたんですよ。それと、言いましたよね?NOは無いって?」
男は、向井さんの肩に手を置いて、にこりと微笑んだ。
向井「か、帰ります!」
向井さんは慌ただしく帰り支度をして、店から出ていった。
男が着衣の乱れを直して、こちらに歩いてきた。
男「お疲れ様。忘れ物?」
「あ、いえ。あの…」
男「戸締り、よろしくお願いしますね?」
男はにこりと微笑んでから、俺の肩をポンポンと叩いて去っていった。
それから、俺は力なくその場にへなへなと座り込んだ。