第12章 愛のかたまり
「痛いの痛いの、とんでけー」
翔「お、大野くん。子供じゃないから…そんな、は、恥ずかしいよ…」
子供の時に母ちゃんがしてくれたように頭を擦ってあげていたら、櫻井翔くんは顔を真っ赤にして、俯いてしまった。
あ…。
俺の中でまだ子供の時の、12歳の時の櫻井翔くんが居て。
でも、目の前にいる彼は22歳の大人なわけで…。
そうだよ。
まだ学生とは言え、彼はもう成人してるんだ。
こんな子供にするようなことは、嫌だよなあ?
「ごめん…」
頭を擦っていた手を引っ込めようとしたら、手首を掴まれてぐいっと引っ張られた。
そして、とんっと彼の胸に飛び込んだ。
どきっ…
翔「これで許してあげます」
そう言って、俺をぐっと引き寄せ抱き締めてきた。
その刹那、心臓が早鐘を鳴らしだす。
この気持ちに気付くまでは、この腕のなかは、安心できる場所だったのに、今は…。
しずまれ、しずまれ…。
翔「大野くん…」
「はい…なんでござんしょう?」
わーわーわー!
なんだなんだ、“ござんしょう”って!
翔「ぷっ。変な日本語」
自分でも変だと思っていたところに、櫻井翔くんからもだめ押しされ、さらに落ち込んだ。
それを感じたのか、櫻井翔くんが俺の後頭部をさらさらと撫でてくれた。
翔「大野くん。あの約束、覚えてますか?」
「約束?」
櫻井翔くんの胸に顔を埋めたまま、返事をする。
翔「僕が大野くんの背を追い越したら…お祝い、してくれるって言ってたこと、です…」