第12章 愛のかたまり
しゃがんで床を見ると、ワインは広範囲にこぼれていた。
ぼろ雑巾を持ってきて、ローテーブルの下に潜り込んで床を拭く。
翔「大野くん。何してるの?」
―ガンッッ…
拭き掃除に集中していたから、背後から声をかけられて、全身がビクリと揺れる。
~と、その拍子にローテーブルに後頭部をがっつりぶつけた。
「ぁぅ…っっ!」
鈍い痛みが後頭部を襲う。
目を閉じて、痛みが去るのを待つことにした。
翔「だ、だだだ、だだだだだーっっ!」
ドタドタと近づいてくる足音に聞き耳をたてながら、痛む頭を擦った。
翔「だだだ、だいひょうびゅうっ⁉おおにょきゅんっ!」
余程焦っているのか、滑舌がおかしい。
「う…うん。大丈夫…。ちょっとチカチカってなってるから…でも直ぐにもど…」
―ゴンッッ…
ん?
ゴン?
ゆっくりと目を開けていき、音のした方に顔を向ける。
ローテーブルに潜り込んで俺の様子を見ようとしたのか?
隣で後頭部を押さえながら、「ふぉぉっ…」と唸っている櫻井翔くんの姿があった。
「ぷっ、ふふふっ」
らしくないその姿に、思わず吹き出してしまった。
翔「ひ、ひどいよ…笑うなんて…。大野くんのばかぁ…」
うるうると今にも泣き出しそうな目でこちらを見てきた。
「ふふふ。ごめんごめん」
片手でごめんのポーズをしながら、もう片方の手で、櫻井翔くんの頭を擦ってあげた。