第12章 愛のかたまり
―コンコンコンッ
翔「入ります」
「どうぞ」
櫻井翔くんが薄いピンクの紙袋を持って入って来た。
翔「退院おめでとうございます。これ、荷物になると思ったんですけど…」
そう言って、紙袋を差し出してきた。
「ありがとう」
受け取って、直ぐに中身を確認する。
ロールケーキだった。
翔「昔はよく雅紀くんと3人で食べましたよね。来る途中で懐かしくなって買っちゃいました」
櫻井翔くんが右頬をポリポリと掻いた。
昔から変わらないその仕草に癒される。
「嬉しいよ。ありがとうね」
そうだった。
俺、昔はよく甘いもの、食べてた…。
先生と付き合ってから、先生が菓子類を嫌いだったから、全く食べてなかった…。
和「好きだからって食べ過ぎないで下さいよ」
いつの間にか、担当看護師の二宮さんが櫻井翔くんの隣に立っていた。
翔「うわっ!和也、いつ来たの?」
和「今ですよ。まったく…。翔さんは相変わらずビビりなんだから…」
二宮さんが、やれやれ、なんて言いながら俺に目配せしてきた。
翔「そ、そんなことないぞっ!あっ、そうだ、和也。大野くん、今日退院するんだ」
和「はぁ…。翔さん、知ってますよ。わたしが担当だったんですから」
翔「だから、お世話になったって言いたかったの。もう!」
小学校からの幼馴染みの2人。
いつもしっかりしてる櫻井翔くんが二宮さんの前だと、とっても可愛くて。
2人を見てるの、好きだなあ。