第12章 愛のかたまり
翔「あっ!大野くん!」
櫻井翔くんが隣の車両から手を振りながらやって来た。
グラウンドでの一件以来、たまに出会うとこうして話しかけてくれる。
「今日は、サッカーは休みなの?」
翔「あ、もう引退したんです。それに、中学からは勉強に専念しようと思ってます」
「そっか。なんか、もったいないね?」
翔「へ?」
「君がサッカーしてるの見るの、結構好きだった。ああ、サッカーをほんとに好きなんだなって伝わってきてさ」
翔「ありがとうございます…。大野くんにそう言われると、なんだか照れますね」
櫻井翔くんが頬をポッと赤く染めて、右頬をポリポリと掻いた。
電車のドアが開いて、ドヤドヤと人が乗ってきた。
この駅は、いつも大勢の人が乗り降りしている。
俺は2駅先で降りる予定。
だから、ここからはドアの側に立つ。
それが俺のルーティーンになっていた。
俺が立ち上がったもんだから、櫻井翔くんも着いてきた。
俺の左隣に櫻井翔くんが陣取った。
「あれ?少し伸びた?」
この前会ったときは、俺の肩より少し低いくらいの身長という認識だった。
でも、今は肩よりちょっと上になっていた。
翔「え?伸びてますか?」
「うん。そんな気がする」
翔「やった♪」
櫻井翔くんが小さくガッツポーズをした。