第8章 若葉のころを過ぎても
【O】
「ちょっと、呑みすぎたな…」
会場から出て、トイレに向かう。
絵に描いたような千鳥足に笑えてくる。
高校を卒業して5年。
翔と話すのは、久しぶりだ。
あのホテルでの件以来、避けられてたからな。
大学も違ったし…。
手を洗いながら、鏡に写る顔を眺めた。
なんか、緩んでんな…。
ハンカチなんてものは持ってないから、手を振りながら乾かす。
会場に戻る途中、前から翔と相葉が歩いて来るのが見えた。
「もう、帰るのか?」
雅「あ?大野か…?久しぶりだな。翔が酔ったみたいだから帰るよ。わりいな。今日は楽しかったよ」
「ああ」
相葉が「車まわしてくる」と翔をロビーに残して行った。
椅子にぐったりと項垂れるように座っている。
かなり、酔ってんなー。
自販機で水を買って翔に飲ませた。
ゴクゴクと勢いよく飲んで、俺の胸に凭れてきた。
この状況って…
あのホテルでの出来事がフラッシュバックした。
意識が浮遊して…
気がついたときには、俺の家のベッドの上だった。
そして、隣には翔が寝ていた…。
何があった…?