第8章 若葉のころを過ぎても
【A】
銀杏の木をボーッと眺めているあいつを見つけてしまった。
クッソ。
この道は避けるべきだったの、忘れてたぜ。
あいつに気づかれないように、後ろを通りすぎ…
智「あっ…」
れる訳、ないっすよねー。
智「よお…」
「なにが“よお”だよ?お前のせいで、翔は倒れたんだぞ?!」
大野の胸ぐらを掴む。
こいつは、ビビるどころか「わりいな」なんて悪びれもせずにヘラヘラしやがる。
智「翔が倒れたのって俺だけのせいじゃないぜ?」
うっ…。
まあ、そうだけど。
―3日前―
コンシェルジュに案内されながら、翔のお父さんが泊まっているという部屋へ向かった。
部屋についたら、ドアをノックしながらコンシェルジュが声をかける。
中から、コンコンコンと音が聞こえた。
何でノック?
コンシェルジュのおにいさんと顔を見合わせる。
暫しの沈黙。