第8章 若葉のころを過ぎても
【A】
ホテルの時計と自分のスマホで、交互に時間を確認する。
何度確かめたかな?
俺、こんなにイライラしたことあったかな…?
ロビーのソファーで、足を何度も組み替えたり貧乏ゆすりしたり…。
エレベーターから降りてくる人を凝視する。
時折、俺からの視線に気づいた人が、怪訝な顔をして去っていく。
なんだよ⁉
全然降りてこねえじゃねえか?!
俺より先に…?
翔のドンくささからいって、それはないな。
だけど、俺がここに居ることを翔たちに、何て言えばいい?
素直に「翔をつけてきましたー!」なんて、言えるわけねえし。
「ああ、モヤモヤする!」
頭をガシガシと掻く。
俺は、本来頭で物事を考えてから行動するタイプじゃないんだよ⁉
ああ、もう~。
よし!動く!
それから考える!
髪をさっと手櫛でセットしてから、ズンズンとフロントまで歩いていく。
「あの、櫻井って人が泊まってませんか?」
あ…?
俺は、自分で発した言葉に驚いた。
何で、翔のお父さんがここに泊まってるって思ったんだろ?
~なんて考えてたら。
こんなに高級なホテルなのに、あっさり教えてくれた。
取り敢えず、翔のお父さんの部屋に行くことにした。
そこに、翔たちがいるかもしれないしな?