第8章 若葉のころを過ぎても
【O】
父ちゃんたちが入っていった部屋の扉に耳をあててみた。
「う~ん。聞こえねえなぁ?」
俺の後ろに立ってる翔がタメ息を吐いた。
さて、どうするか?
翔「どうする?帰る?帰ろうよ?」
翔に腕を引っ張っられる。
「あんなこと聞いて帰れるか?」
翔「そうだけど…。もう、あんまり知りたくないしさ…」
まったく。仕方ねえなぁ。
周りに人がいないかを確認する。
「翔。ごめん!」
翔「え?」
翔の腹を目掛けて、力一杯殴った。
一応、謝ったからな?
翔が声を発することも出来ずに、腹を押さえながらその場に蹲る。
ホテルの従業員を探して「友達が苦しんでるから部屋で休ませてくれ」って、半ば強引に父ちゃんたちの部屋の隣の部屋に入ることに成功した。
翔が腹を押さえて、くの字になりながら俺を睨み付けてくる。
ベッドの縁に座りながら
「だから、ごめんって言っただろ?お蔭でここに入れたんだし…」
翔「………そうだけどさ?他のやり方なかったの?」
翔に暫くブツブツと文句を言われた。
それから逃れるために、壁に耳をあててみた。