第8章 若葉のころを過ぎても
部屋の前で何してんだろ?
智父(二宮)「やっぱり、私は…」
翔父「かずなり。今日こそはって、思ったから来てくれたんじゃないのか?」
父さんが二宮さんの肩を抱き寄せた。
智父(二宮)「うん。そうだね。今日は、家族のことは忘れるって決めたのにな。弱いな、私は…」
翔父「はは。かずなりは昔から変わらないな。そこが良いところだよ。さあ、行こうか?」
父さんがカードキーをかざして、扉を開けた。
智父(二宮)「ああ。いつも、ありがとうな、潤」
二宮さんが、父さんの腰に腕を回した。
そのまま2人で部屋に入っていった。
な、何?今の?
父さんがあんなに穏やかに笑ってるの見たことないよ?
それに、二宮さんが父さんのことを“潤”って呼んでたよ⁉
いつも“櫻井”って、呼んでたよね?
え~っ⁉どういうこと?
不意に体が引っ張られて、足が縺れてこけそうになる。
大野くんが俺の肩に手を置いて
智「翔。確かめよう?」
真剣な顔をして俺に言ってくるから、何も考えずに頷いた。
大野くんが、扉に耳をあてた。
智「う~ん。聞こえねえなぁ?」
そりゃ、そうだ。
聞こえるわけないよ?
大野くんって…天然なのかな?