第8章 若葉のころを過ぎても
【S】
父さんたちを見張っていたら、雅紀が現れた。
どうして?
俺、言ってないよな?
考えてたら、父さんたちの姿がないって大野くんが慌てていた。
エレベーターの前に居る雅紀に気づかれないように、とりあえず非常階段に行ってみた。
1つ下の階の踊り場で父さんたちを発見した。
大野くんと近寄ってみる。
父さんたちが手を取り合って、見つめあってる。
二宮さんと仲が良いとは思ってたけど…。
なんだか、いつも家で見る2人と明らかに違う雰囲気に戸惑った。
父さんたちが、動き出した。
大野くんと一定の距離を保ちながら、後をついていく。
智「このまま、一階まで行くんかな?それとも、ここに…」
「ここに…何?」
大野くんが、最後を濁すから気になった。
でも、ずっと手を繋いでいることの方が気になりだした。
思いきって、聞いてみようかな?
「あのさ、大野くん。手を…」
智「ん?何?…って、しーっ!隠れるぞっ!」
大野くんが口に人さし指を当てて、俺の肩をぐいぐいと押してきた。
廊下の角で身を隠した。
大野くんの肩口からそっと見てみる。
父さんたちが、部屋の前で立ち止まっていた。