第8章 若葉のころを過ぎても
【O】
翔があまりにも父ちゃんたちのことを気にするから。
後を付いていった。
翔「…はあっ、はあっ、ねえ?」
翔が何か言ってる。
父ちゃんたちを見失わないように、必死な俺は翔を気遣う余裕がない。
翔「ねえ、ってば!…はあっ、はあっ」
翔が俺の手を振り払った。
驚いて、後ろを振り向いた。
肩で息をする翔が、俺を睨んでくる。
翔「は、速いって!もうちょっと、ゆっくり…はあっ、はあっ」
そうだった。
翔は、激烈に運動神経が悪かったんだった!
でも、翔のペースに合わせてたら、父ちゃんたちに追い付けないし…。
父ちゃんたち、意外と歩くの速いから。
~って、こんなことしてる場合じゃねえし。
「そんなに速くねえし。それに、こんなとこで休んでる場合じゃねえし。行くぞ?」
翔の手を取って、再び父ちゃんたちを追いかける。
ラッキーなことに、エレベーターの前で2人の姿を捉えた。
翔「はあっ、お、追いつ、いた、ね…」
そんなに距離ねえし。
そんなに速く歩いてねえし。
このくらいで息切れって…。
もうちょっと、鍛えようぜ?
智父(二宮)「ほんとに?」
翔父「ああ」
父ちゃんたちが何か話してる。
翔も俺の手をギュッと握って、聞き耳をたてている。