第8章 若葉のころを過ぎても
【A】
最上階に着いた。
エレベーターの扉が開けきる前に、飛び降りて、小走りで目的地に向かう。
翔。ケーキ、ダメだったよな?
なのに、大野とだったら行くのか?
なんでだよ⁉なんでだよっ⁉
入口でチケットを持って無い人は入れないと止められた。
ここから中の様子を伺う。
見える範囲に2人の姿は無い。
仕方ないから、2人が出てくるまで、ここで待つことにした。
早く出てこいよ!あーっ、イライラする!
無意識に貧乏ゆすりしていたみたいで、行き交う人が俺をチラ見していく。
なんだよ⁉
普段は気にならないことが目について仕方ない。
ホテルの人が近づいてきて「お客様」と声をかけられた時だった。
会場から出てくる人の中に、翔のお父さんがいた。
咄嗟に隠れた。
また、ホテルの人が近づいてきたから、口に人差し指を当てて静かにするように促した。
翔のお父さん、何でここに居るんだろ?
一緒に居る人は誰だろ?
そんなことを考えていたら、翔と大野が会場から出てきた。
何で、手を繋いでるんだ?
それだけで、沸々と怒りが沸いてきた。