第8章 若葉のころを過ぎても
【S】
二宮さんが大野くんのおとうさんだったなんて…。
世の中って狭いなーって、考えてたら…。
大阪に出張に行ってる筈の父さんが現れた。
思わず、立ち上がってしまった。
大野くんの「どうした?」って声で、我に返った。
なんで、父さんが?
まさか、ここで…女の人と…うわああっ!考えたくない!
バッと顔を上げて、父さんを見てみる。
二宮さんから、A4サイズくらいの紙袋を受け取っている。
なんだろ?
ああ、そうか。忘れ物だな?
うん、きっとそうだ。そうに違いない。
大野くんが「知りあい?」って、聞いてきたから、父さんだって話した。
そうしたら、父さんを見た後で俺を見て、ニコニコしている。
なんだろ?
父さんたち。大体さー。
なんで、こんなところで会ってるんだろ?
会社で会えるだろうに?
大野くんが首を傾げて、俺を見てくるから…。
テーブルから、身を乗り出して耳元でそっと囁く。
「今日から大阪に出張だって言ってたんだ。それなのに、どうしてここにいるのかな?」
大野くんも俺の耳元で小声で
智「今日から?どれくらい?」
「えっと…確か、2泊3日」