第8章 若葉のころを過ぎても
「どうした⁉」
翔が俺の顔を見て、ハッとしたように座った。
何事?
「どうしたのさ?」
翔がテーブルに肘をついて、頭を抱えて俯く。
だから、何事?
父ちゃんが席についた。
俺たちの位置からは見えるけど、父ちゃんからはパーティションがあるから、こちらに気付いてないようだ。
向かいの席に、男性が座った。
父ちゃんと歳は近そう。
所々に白髪の混じった頭をオールバックにしている。
キリッとした眉毛で、全体的にシュッとした顔立ち。
カッコいいかも…。
翔が顔をガバッと上げて、2人を見ている。
いや、正確には父ちゃんの向かいに座った男性を見ている?
「知りあい?」
親指でくいっと男性を差した。
翔「あ、うん。父さん…なんだけど。でも、何でここに居るのか…?」
父さん…。翔の父ちゃんかあ。
もう一度、男性を見た。
ほぉぉ。似てる。
翔は父ちゃん似だから、イケメンなんだな?
「なんでって?」
テーブルから身を乗り出して、俺の耳元で囁いてきた。
翔「今日から、大阪に出張だって言ってたんだ。それなのに…」