第8章 若葉のころを過ぎても
翔の目線を追ってみる。
あっ…
翔「二宮さん…」
「父ちゃん…」
翔の言葉に驚いて顔を見る。
翔も同じだったらしく、俺の顔を見ている。
翔「大野くんって、二宮さん…の、息子なの?」
俺は、座り直して無言で頷く。
翔「ほんとに?でも、名字、が違う…?」
「ああ。父ちゃんさー、仕事の時は旧姓使ってんだ」
翔が「そうなんだ」と父ちゃんを見ている。
俺の父ちゃんは、結婚して大野姓になった。所謂婿養子ってやつ。
結婚して20年経つのに、今だに仕事の時は旧姓を使ってる。その方が便利とかなんとか…?
そうかなあ?
あれ?そういえば…。
「翔。父ちゃんを知ってるの?」
翔が視線は父ちゃんに向けたまま、頷く。
「なんで?」
父ちゃんから、目を離さないまま
翔「え?えっと、父さんの高校からの親友らしくて、仕事も同じ部署だって聞いてる。よく家に来るんだ」
「ふ~ん。そうなんだ?」
さっきからずっと父ちゃん見てるけど、なんだろ?
「なあ?何で、ずっと父ちゃん見てんの?」
急に、翔がテーブルをバンッと叩きながら、立ち上がった。
「どうした⁉」