第8章 若葉のころを過ぎても
【O】
「うわあ~。迷うなあ~」
ショーケースに並ぶ、色とりどりのケーキ。
一口サイズになっているから、全種類制覇したくなる。
翔「ふははっ。大野くん。時間制限ないからさー、ゆっくりいこうよ?」
ショーケースに両手をついて、その場から動かない俺の背中を翔がポンポンと叩く。
「時間制限無いの⁉うわあ~うわあ~」
翔「大野くんって、案外可愛いとこあるんだね?」
「か、可愛い⁉初めて言われた…」
顔が熱くなる。
多分、今顔真っ赤だろうなぁ?
翔が確保した席について、皿いっぱいに取ってきたケーキを頬張っていく。
ん~っ!うまっ!サイコーッ!
翔を見ると、コーヒーばかり飲んで、ケーキには、手をつけていない。
「なあ?食べねえの?」
翔「え?ああ。うん、そうだよね?…おいしい?」
「ああ、うまいよ。もしかして…」
甘いもの、苦手なのか?って、聞こうとしたけど、止めた。
翔「ん?なに?」
「ううん。何でもない。追加取って来るわ」
翔が「いってらっしゃい」と手を振ってくれる。
俺が席を立とうとしたとき、翔の動きが止まった。